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トイレのニオイでわかるベンチャー企業の黄昏

トイレが臭い。

最近うちの会社のトイレの個室が妙に臭くなった気がする。

とはいえ、別にトイレの清掃が行き届いていないわけではない。

うちの会社が入っているビルはまだ築2年くらいのピッカピカ。

しっかり清掃業者も入っているので一日3回くらいは掃除してくれます。

そう、臭いのはトイレそのものではないんです。

前の人が排泄したその残り香が臭いんです。


うちの会社はいわゆるネットベンチャー企業の一つになるのですが、創業して早15年。

随分前に上場もしています。

ちなみに私はその会社のなかではなかなかの古株で、入社してそろそろ10年になろうかというものです。

私が入社した当時はまだ40を超える人間は一人もおらず、平均年齢も27位だったと思います。

が、それから10年が経ち会社も随分様変わりしました。

役員のほぼ全員は40オーバーとなり、当の私も30オーバー。

おそらく会社の平均年齢も30をとっくに超えているのではないでしょうか。

そんなこんなで私の会社のトイレの個室は加齢臭というか老廃物の蓄積により、前の人が入った直後に利用すると「臭っ!」となる頻度が非常に高くなったと思うのです。


まあトイレの臭いなんぞは我慢すればいい話なんですが、一応ベンチャーを自称する企業としては平均年齢の上昇はあまり良い話ではありません。

とはいえ、新卒採用は継続して行なっているので、若い遺伝子が入ってこないわけではありません。もちろん部署や職種によりますが。

どちらかというと上層部の新陳代謝が行われないのが原因です。

10年前に部長クラスのポジションにいた人たちは大体残っているので、役員の平均年齢はそのまま10才上昇したことになります。

歴史ある会社であれば、定年退職者も多くいて、もともとそういった年齢層も踏まえた人口ピラミッドになっているので、よほど採用を絞らない限り、平均年齢が一律に上昇していくことはありません。

が、スタートが若いベンチャー企業にとってはそううまくは行きません。

いくら毎年コンスタントに新卒採用を行なっても、既存社員は当然毎年1才年をとっていきますので、どうしても平均年齢は上がっていきます。

しかも、歴史ある大企業であれば、5年や10年で役員の大半はいなくなると思いますが、うちのような役員の平均年齢が40程度の場合には、20年くらいは変わらないことになります。

もちろん、これを防ぐ方法はあります。

役員に継続可能な最大期間を設けたり、毎年一定の割合を若年のマネージャー層から抜擢するなどすれば、役員という少ない人数の中では適切に新陳代謝を行い、平均年齢の上昇を抑えることは可能です。

ただ、やっぱりなまじ成功してしまったベンチャーの役員だと、自分たちの老化を冷静に振り返るのって難しいんですよね。

社員からすると、明らかに役員の高齢化に伴い、判断力の低下や、意識が守りに入っているのが見て取れるのですが、それを自分たちでは感じないというか、現実として受け止められないというか。プライドも高いですしね。


ということで、トイレの個室の残り香が臭いのは、平均年齢の上昇を表し、血気盛んなベンチャー企業としては老化、斜陽、黄昏を暗示しているような気がします。

もちろん、年齢で全てを判断できるわけではありませんが、上場して暫く経つベンチャー企業と取引する際には、トイレの臭いで判断するのもひとつの指標として良いのではないかというお話。