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仕事で使える?明日から経営学者っぽくなれるキーワード7つ

最近、こちらの本を読んでました。


ヤバい経営学―世界のビジネスで行われている不都合な真実

ヤバい経営学―世界のビジネスで行われている不都合な真実


「ヤバい」ってほど別にヤバい内容ではないですが、会社経営上のよくある過ちとか迷信とかに切り込んだ内容とでも言いましょうか。

それはさておき、こちらの本を読んでいると、全然知らない理論とか用語がいっぱい出てきたので、今日はそれらを紹介したいと思います。

おもむろに会社で使ったりすると、頭でっかちな奴として煙たがられることうけあい☆


プロスペクト理論

ダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーが提唱している理論。

自分だけが小さな損をするよりも、他の人と一緒に大きな失敗をする方を人間は好む、という話。

赤信号 みんなで渡れば 怖くない ってやつですね。

特に日本人に見られがちな特徴として、よく語られる話ですが、実は全然そんなことはないみたいですね。

グローバルガー、などと言うまでもなく、人間みんな愚かだということでしょうか(達観)。

差別化戦略を理解せず、競合他社の後追いばかりしたがる上司には「プロスペクト理論ですね」とクールに言い放ちましょう。


選択バイアス

何かのデータを見て、分析や対策をするときに、既にデータ自体が偏っていて、間違った判断をしてしまう、というもの。

例えば、成功した企業の共通点だけを洗い出して、それを踏襲しようという場合などに起こる。

母集団を社会全体に広げて俯瞰してみれば、その成功企業の共通点は案外、無数の失敗企業にも共通することだったりする。

正しいサンプルを集めなかったために、見えてくる結果も歪んでしまうというもの。

学生の卒論とか官庁、マスコミ発表のデータなんかは多くの場合、既に結論ありきでそれを補完するためのデータをアンケート調査などで作り出そうとするため、このような選択バイアスを意図的に利用する場合も多いですね。

気を付けましょう。


アビリーンのパラドックス(多数の無知)

社会心理学における、人は少数意見を述べたがらないことの例え。

特に多数決、民主主義、合議制の組織においては少数意見を述べることことは攻撃の対象になったりする。

なので、多くの人はある意見に反対であっても、周りの多くの人が賛成である場合、その反対意見を押し殺してしまうことが多い。

攻撃されることを覚悟の上で反対を述べられるほど強い人って案外少ないんですよね。

会社経営においては、誰も社長の意思決定に逆らえないので、取締役以下全員が「ちょっと反対だな」と思っていても、その意見を社長に面と向かって言えないために、社長から見ると全員一致の素晴らしい意思決定に思えてしまったり。

裸の王様とも言います。

実際のアビリーンのパラドックスの例では、アビリーンという田舎町まで、誰も行きたくないのに旅行してしまった家族の話として出てくるそうです。悲しい家族。


フレーミングコンテスト

原文そのままで引用すると、

組織内でのコミュニケーションを通じて、自分たちが持っている考え方の枠組み(フレームワーク)を、グループ全体が共有する考え方の枠組みへと昇華させていくための試み

だそうです。

本書の中では、多くの会社の戦略立案会議がこのようなフレーミングコンテスト風に行われているという指摘。

つまり、会社としてどのような戦略をとるか、ということを考える戦略立案会議は、真っ白な状態で本来話し合い、結論そのものをより良い戦略へ昇華すべきです。

ところが、多くの会社では自分が統括する部署の利益などに引っ張られて、お互いに自分の考える戦略を他のみんなに納得させるための叩き合いになってしまいます。これがフレーミングコンテストだそうです。

例えば、広告宣伝の部署ではいかに面白い広告を作って予算を投下するか、という話をしたがりますし、営業部はいかに多くの営業マンが必要か、ということを力説したりします。

予算の取り合いとかにつながることも多いですね。

最悪なのは、これら各部署の主張による利害調整を、一本筋が通った戦略を作るのではなく、単なる部門長をなだめすかすためだけに行ってしまう場合です。

全部の部署の主張を勘案すると、全体の予算が5割超過になってしまうので、全部署の予算を均等に5割削った結果、全体として何の戦略もない今までの延長線になってしまったりね。

仮にフレーミングコンテストをするにしても、本来は広告重視なのか営業重視なのか、といった軸足は残しながら戦略を決めていかないとつまらないと思います。

まあ、本来は各部署の責任者は、自部署の予算を増やすことではなく、本当に会社がどちらに進むべきかを戦略として議論するべきですが。

あくまで、その部門の「利益の代弁者」ではなく、「専門家(詳しい人)」として振る舞ってくれるとよい議論ができるのですが。なかなか難しいですね。


イカロスのパラドックス(成功の罠)

本日二つ目のパラドックスです。

ギリシャ神話に出てくる青年イカロスの話ですね。

ろうで固めた鳥の羽で飛び立ったイカロスは、調子に乗って高度を上げ過ぎて、太陽の熱でろうが溶けてしまい、落下して死亡するという伝説。

昔、小学生のころみんなの歌とかにも載っていて「こわ!」と思った記憶があります。

本来は高く上がれば上がるほど寒くなるので、大丈夫だと思うんですけどね。

成功している会社は、何もかもうまくいっていると思い込み、本来なら注意を払うべきリスクまで見過ごしてしまう、ということの例えのようです。

天狗になる、視野狭窄とも言えますね。

イノベーションのジレンマ、は微妙に違うか。


フレーミング効果

まったく同じ内容・結果であっても、表現のしかた次第で人間の取る選択肢が変わってくるということ。

例えば、ある選択肢A、Bがあったとしよう。
とある1000人の命運がその選択の結果に委ねられていると仮定します。

選択肢A:500人は必ず救われる
選択肢B:1/2の確率で1000人全員が死亡し、1/2の確率で1000人が救われる

あなたならどちらを選びますか?

マイケル・サンデル教授の授業でありそうな話ですが、AもBも期待値は同じです。

ただ、実験してみるとAを選ぶ人の方が多かったようです。500人は必ず救われますからね。

そこで、この実験の文言を少しだけ変えてみます。

選択肢A:500人は必ず死亡する
選択肢B:1/2の確率で1000人全員が死亡し、1/2の確率で1000人が救われる

選択肢Bは変えずに、選択肢Aを「死亡する」というネガティブな表現に変えてみました。

すると、なんということでしょう!今度はBを選択する人が増えたというのです。

「死亡する」というネガティブな表現が人間に選択することをためらわせたのだそうです。

前回も今回も500人が死亡する事実は変わらないというのに。

これがフレーミング効果です。

プレゼントかするときも気を付けたほうがいいかもしれないですね。


パテントシャーク

文字通りパテント(特許)を武器にしたシャーク(鮫)のこと。

特許を自社の事業を守るためではなく、自社の特許を侵害してきた獲物から特許侵害の慰謝料をむしり取るために使う企業、弁護士などのことらしいです。

このパテントシャークの恐ろしいところは、獲物が自社の特許を侵害したことを気づいても、すぐには指摘してこないことです。

特許を侵害されても、すぐに指摘してしまったらうっかりに気付いた獲物が利用を取りやめて終わりです。

そうではなく、特許を侵害されていることに気づいてもすぐには指摘せず、獲物の事業が成長するのを待ちます。

ある程度、獲物を野放しにして、事業として会社として成長してきたところで、急に特許侵害を訴えます。

獲物としては「今まで何も言ってこなかったのに。そんな殺生な」と思うのですが、とはいえここであきらめるとせっかく走り始めた事業をたたむことにもなりかねないので、法外とも言える慰謝料や特許料を払ってしまうようです。

獲物を泳がせて、疲れたところを襲うあたり文字通りのシャーク、もしくはハイエナって感じですね。

私だったら恥ずかしくてそんなビジネスできないけど、世の中にはいろんな人がいるものです。

この辺は裁判所もしくは特許庁がちゃんと対応すれば撲滅できると思うんだけどな。



いかがでしょうか?

本書に出てきた、ちょっと経営学者っぽいけど多分違うキーワードを7つ紹介してみました。

嫌われるのが嫌でない人はぜひ明日から会社で使ってみてください。



ヤバい経営学―世界のビジネスで行われている不都合な真実

ヤバい経営学―世界のビジネスで行われている不都合な真実