みんな知ってる?働きバチが子どもを作らず働き続ける巧妙な理由
一つの巣の中で役割分担をすることで有名な社会的昆虫のハチ。
有名な話として、産卵を担当するいわゆる女王バチと餌集めなどを担当する働きバチには生物学的な違いはないと言われています。
ただ、それでも一度女王バチとなったハチはひたすら産卵に専念し、働きバチになったものは一生子どもを残すことなく給仕に専念します。
この違いはどこから来るのでしょうか?
普通、生物は子孫を残すことを最優先に特化して進化していきます。
自らの遺伝子をなるべく次の世代に残せるように、例えば、一匹のメスを取り合って喧嘩したり、メスに少しでもモテるように角を大きくするなど、特徴的な形質をどんどん強めていったりします。
生殖〜産卵という行為に着目してみても、卵を宿すメスのほうが産卵までのボトルネックになることが多いので、言ってしまえば子どもを産めるメスは全員産卵に集中したほうが、個体としても群れとしても多くの子孫、遺伝子を残せるように思います。
ところが、ハチの生態はすこし違い、女王バチと働きバチとにしっかり役割分担されています。
その秘密は遺伝子が乗っている染色体の仕組みにあるそうです。
ハチはオスとメスでは持っている染色体の数が違うんだそうです。
簡単にモデル化すると、オスが1つ(Aとします)、メスが2つ(X、Yとします)の染色体を持っていると考えましょう。
この組み合わせから生まれるメスの働きバチはAX、AYの2つのパターンに分けられます。
娘のAX、AYにとって、母親であるXYとはそれぞれ遺伝子の1/2を譲り受けていることになります。
なので、次に同様に娘AXが、自分が母親となって子どもを作ると、生まれてくる子どもとはやはり遺伝子の1/2が自分と同じものになります。
これに対し、同じ父親と母親から生まれるAXにとっての妹は、遺伝子全体の1/2であるAは1/1の確率で、もう半分のXは1/2の確率で遺伝しますので、AXから見て1/2×1/1+1/2×1/2=3/4の遺伝子を共有することになります。
つまり、働きバチにとっては自分の娘よりも妹のほうが、自分と同じ遺伝子を多く共有している存在になるのです。
この染色体の仕組みにより、働きバチは自らの遺伝子をより多く残せるように、むしろ産卵以外の役割を進んで行い、女王バチの産卵行為を助けるようになり、あの極めて高度なハチ社会が形成されるのだそうです。
遺伝子って本当におもしろいですね。
拙い説明でしたが伝わりましたでしょうか?
ちなみに、この働きバチの染色体に関するエピソードは下記の本から仕入れました。
- 作者: 榛葉豊
- 出版社/メーカー: 化学同人
- 発売日: 2012/08/10
- メディア: 単行本
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様々な古今東西の思考実験を紹介する本なのですが、思考実験とはあんまり関係ない単なる事例が心に残ってしまうっていうね。
それはさておき、ハチが社会を構成するための仕組みとして組み込まれた遺伝子は本当に面白いです。
社会的動物の代表たる人間の少子化問題を解決するために、何か役立てられないものでしょうか。
反対に、人間の遺伝子はハチと違って、生殖して子孫を残すことが最も自分の遺伝子を効率良く残せるはずなので、これは働きもせずに昼間っから生殖してろってことか?(違