5円の利得を得るために500m歩く社長はコスト意識が高いのか
突然ですが私はとあるITベンチャー系企業で働いています。
そんなうちの会社のカリスマ社長に、古き良き時代のエピソードを交えながら、創業当時のコスト意識について以下のようなお言葉を賜りました。
僕はいつもコピー用紙を買う時は、500メートル遠いオフィス・デポでも、5円安く売っているチラシを見れば、わざわざそこに買いに行っていました。 500枚でたった5円しか変わらないのですが、その5円の差、1円の差というのが、すごく大事な積み重ねだと思っていたからです。
創業初期をクリアにイメージできる素敵なエピソードですね。
どんな会社も創業期が資金繰りなどを含めて一番大変とよく聞くので、うちの会社も例にもれずそんな感じだったのだろうなーと郷愁の思いを感じずにはいられません。
それはさておき、コスト意識。
一見節約しているかのようなこのエピソード、本当に会社の利益につながっているのでしょうか?
会社内でそんな突込みを入れようものなら、既に窓際にある私の席が、窓を突き破って20メートル下の路面に放り出されてしまうこと請け合いなので、誰も読んでいないであろうこのブログを検証の場としてみました。
■大事なことだね、時間もコスト
まず、真っ先に思いつくのが時間もコストだよ、という突っ込みです。
500メートル遠い店にわざわざ買いに行くとすると、それ相応に時間がかかります。
往復でちょうど1キロメートル。けっこうな距離です。
不動産業界などでは人間の歩く速度を分速80メートルと規定しているので、それに照らし合わせるとすると、1キロメートルの往復にかかる時間は12.5分。
1時間の約1/5の時間がかかります。
時給の1/5を費やしても利益が出るとはどういう状況が考えられるでしょうか?
■パターン1 うちの社長は大貧民
なんといっても創業当初です。
時給の1/5を費やしても5円のコストが削れるのであればペイするのかもしれません。
そう考えるとこの当時のうちの社長の時給は25円相当。戦後か。
まあ実際のところは創業当初なんてまだ顧客が開拓できていなければ、時給0円というのもザラでしょうから驚くには値しないかもしれません。
とはいえ、そんな状況を続けていても文字通りのジリ貧です。
そんな危機的状況を脱するために、夢に向かって会社を動かしているわけなので、このパターンは頂けないですね。
時間はもっと有意義なことに使ってほしい。
■パターン2 うちの社長は力持ち
困ったときは逆転の発想です。
時給が安いのではなく、それだけの労働でペイするくらいに一度で大量のコピー用紙を購入したと仮定しましょう。
ここでは仮に時給1000円としておきます。
コピー用紙の買い出しにかかっているコストは前述のとおり時給の1/5ですから200円相当ということになります。
この行為で利益を上げるためには、一度の買い出しで200円以上の得を出せばいいということになります。
引用部によると、コピー用紙の差額は「500枚で5円」と書かれています。
この単価で200円の利得を出すにはちょうど40倍の量を購入すればいいので20,000枚ですね。
どのくらいの重さになるのかGoogle先生に聞いてみました。
やや厚手の55k、やや薄手の45kとも1枚だと約5gで10円硬貨並みです。
A4の紙1枚って何gくらいあるんですか??感覚がわからず困っています。 - Yahoo!知恵袋
上記によると1枚5グラムなので20,000枚だとちょうど10万グラムになります。
なんと100キログラム。かなりの重量ですね。
これだけの重さを持って500メートル先の会社まで帰ってきたとすると、ひょっとするとうちの社長はかなりの力持ちかもしれません。
あの細身の体にそんなパワーが秘められていたとは。人類の神秘。
■パターン3 うちの社長はブラック
とはいえ、やはり100kgのものを軽々と運ぶというのは現実的ではないですね。
やはりもっとも妥当な解はこちらでしょう。ファイナルアンサー。
ただ単純に時間をコストとしてカウントしていない。
まあまあ、適当に例を書いただけなんじゃないかって?
いやいや、うちのカリスマ社長に限ってそんな手抜きや嘘ともとられることをするはずがない。
エピソードとして語られているのは厳然たる事実として受け止めましょう。
そうするとやはり結論は、ただ時間をコストとして見ていない、というサービス残業万歳のブラック企業のような結論になってしまいました。
まあ創業当初のベンチャー企業なんてたいがいブラックですからね。別にそんなに卑下することではございません。
時間がなければ残業すればいいじゃない、ってやつですね。
最近は上場も果たし、安定志向の人間が増えたからかすっかり居心地のいい会社になったと思っていた弊社。
創業社長の中にはまだ脈々と創業当初のブラック精神が眠っているということで。
とりとめもなくなってきたので、この辺で終わり。
時間がコスト、何を持って利益を出すか、みたいな話はこちらの本で勉強しました。
ベストセラーになっていただけあり、読みやすいですよ。
食い逃げされてもバイトは雇うな 禁じられた数字 〈上〉 (光文社新書)
- 作者: 山田真哉
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2007/04/17
- メディア: 新書
- 購入: 3人 クリック: 170回
- この商品を含むブログ (244件) を見る